プロレス統計

「プロレスの数字とプロレスする」をテーマにプロレスに関連する数字を調べ、まとめ、考えるブログです。

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国内全興行データで見る2020年の日本プロレス界

皆さんあけましておめでとうございます。
今年は諸事情で実家にも帰らず、自宅でいつも通りに過ごしていたのもあって新年感が一切ない正月を迎えていますが皆様いかがお過ごしでしょうか。
まぁとりあえず5日までは休みを取っているので色々調べたりまとめたりするいい機会と思ってゆっくりする予定ではあります(せっかく雪国なのでスキー行ったりする予定ではありますが)

それはさておき、新年と言えば弊ブログでは昨年のプロレス界の振り返りなのですが、色々調べてみたところ、コロナによる休業や無観客興行、以外にも色々と変化が訪れているようで、
フォーマットこそ例年と同様にしてはいるのですが、その実単純比較が難しい結果にもなっているので、その辺を注意してもらいつつ見ていきたいと思います。

 

集計したもの

今回も例年通り国外のプロレスデータベースCagematchに掲載されている興行のデータの内、日本国内で開催されたすべてのプロレス興行についてWebスクレイピングを用いてその開催団体、動員等のデータを集計しました。
Cagematch自体が国外のファンによるデータベースであるので掲載興行の抜けや誤りも含まれるとは思うのであくまで一つの参考程度にしていただけると幸いです。

※観衆未発表興行数推移

まず初めに周知しておかなければいけないのは「プロレス団体は必ずしも大会の観衆・動員数を発表するわけではない」という点にあります。
今年でいうとプロレスリングNOAH、DDTプロレスリングのCyberFight傘下の二団体が途中から一切の大会の観衆を未発表にし始めたのはこのブログでも何度か伝えたとおりです。
両団体は国内でも上位に入る動員をし、なおかつ今年はその存在感を増した年、というだけにその推移を見たかったのですが、何らかの方針によって発表しなくなった模様。
まぁそこについては各団体の指針によっていますし、そもそも「観衆を逐一発表しなければならない」というわけでもなく、むしろその集計にかかる手間を考えるとそこまで重視せずとも…と思うわけです。
実際例年でも全体の1割近い興行の観衆は発表されてませんでしたし(これまでは集計の段階でそういった大会を省いていましたが)

しかし2020年を調べてみるとそういったCyberFightの動向だけに寄らず、実は観衆未発表の大会が急増していたのです。

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上図は2020年の各月の大会の内、観衆の発表があったものを青、無観客=観客0人と発表があったものをオレンジ、そして観衆未発表だったものを緑で示しています。
1,2月はコロナ上陸前ということもあり、1割程度の興行が未発表ではあったもののほとんどが観客数の発表があり(Cagematch上にも記載され)ました。
しかしコロナが上陸し、多くの団体が休業・自粛を余儀なくされた3~6月は一気に興行数が増え、無観客興行と未発表の興行が多数を占めました。
ここを見てみると無観客興行にも「観衆0人発表」のものと「記載なし」の2種類があったと考えられます。

問題はその後、有観客興行が解禁された7月以降のことで、実際無観客興行も行われてはいるんでしょうけど、おおよその団体は有観客興行に切り替えたはず、にも拘らず約半数が観衆未発表で、観衆発表しているものが約半分と、2020年の1,2月とは明らかに割合が異なる状況が続いています。
これについてはいくつかの例を調べてみたものの「有観客興行であるが観衆を発表していない」という場合が多々見られました。
理由については定かではありません*1が、いずれにしても例年以上に集計できている実態は少なく(後述しますが大会の約3割が観衆不明の大会)網羅的とは言えない結果になっていることは考えられます*2

とはいえ、残った7割についてだけでも見ることで何らかの傾向が見えたり、することがあるとも思うので、こういった現状を踏まえた上で以下をどうぞ。

大会・総動員数

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さて気を取り直して集計できた大会のみについての結果になりますが、2020年は1603大会が開催され、総勢43万8542人の観衆が動員されました。
上のグラフのように、予想されていたことではありますが、大会数も動員も大幅に減少に転じ、大会数は前年の約69%、動員に関しては38%とより大きく減少しました。
大会に関しては3~6月の休業・自粛期間に興行を無観客でも行えない団体が多々あったこともあったため減少したものの、それ以降はほぼ通常通りのスケジュールで大会を開催できたためその期間にあった減少幅だったと考えられます。
一方で動員についてはその再開後のキャパシティが50%以下に抑えられたことに加え、上述のように「有観客でも動員を発表しない」場合が増えたこともあって見かけの総動員が減少したものと見えます。
とはいえCyberFight以外でいうと地方大会などで動員を発表しないでおいて他の大会では発表する、というパターンもあったようなので上の数値からそんなに大きく変わらないんでは?と思います(多くても45万人はいくかどうかだと思う)。

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これを踏まえて平均動員を調べてみたのが上図で、2020年の平均動員は415人/大会となりました。
これは1年を通して、観衆発表があった大会の平均なので思ったより減っていない感じになりますが、休業前の1,2月の平均が775人/大会、再開後の7月以降の平均が373人/大会なのでキレイに半減しているのが見て取れます。
こうしてみると年始の時点では例年以上の好ペースだった(2019年の同期間が620人/大会だった)のに対し、自粛に加えてその後のキャパシティ制限が重くのしかかったというのが見て取れると思います。

規模別大会数

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続いて大きく変わったであろうと期待をして、実際にガラッと変わっていた2020年の規模別の大会数割合。
前述したとおり2020年は「観衆不明(unknown)」の大会が34%と最多になりました(黄土色)。
その内わけについては完全に想像の範疇ですが小規模の大会などが多かったのではと疑っています。
勿論CyberFight陣営の興行もありその中にはビッグマッチもあるので例外ではありますが、ノアとDDTを合わせても観衆未発表になったのは90大会で全体の5%、それを差し引いても30%近くのCyberFight以外が開催した大会が観衆未発表だったようです。

続いて多かったのは例年最多を占める100~500人規模の大会で、観衆不明大会が増えたのもありますがそれ未満の観衆の大会(0人:水色、~50人:オレンジ、~100人:緑)の割合が増加しているために~500人規模の大会が減少した感があります。
つまり諸般の事情で寄り小さな動員の大会が増えざるをえなかった、というのが現状のようです。
それに加えて言えば、500~1000人の大会数がそれほど変化がなかった(現象はしている)のに対して、1000人台の大会がかなり減少しているのが少し目立ちます。

団体別動員割合

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最後に団体別の合計値をまとめたのがこちら。
最も多かったのは新日本プロレス(NJPW)で22万3367人(50.9%)、次いでドラゴンゲート4万49人(9.1%)全日本プロレス(AJPW)2万3587人(5.4%)スターダム2万914人(4.8%)大日本プロレス1万6722人(3.8%)などとなっていました。

これらに次ぐのがDDTとNOAHの両団体なのですが、DDTは8月から、NOAHは7月から観衆未発表に切り替えておりご存じの通り”真の”動員とは言えませんが各団体の動員数は1万1337人と1万916人となっていました。
”真の”動員についてはそれこそ高木大社長が発表でもしてくれない限り知る由もないのですが、試算を行うことはできます
DDTの2020年113大会を開催し、その内無観客試合が19大会、有観客試合の内観衆発表があったのが41大会未発表だったのが53大会で、観衆発表の合計が1万1337人
ということで未発表だった53大会も同様の動員だったと仮定すると”仮の”総動員は約2万6千人と見積もられます。
また同様にNOAHは全79大会中、無観客22大会、有観客の内観衆発表が20大会、未発表が37大会で発表合計が1万916人なので、”仮の”総動員は約3万1千人となりますかね。

とはいえ発表済の大会には自粛前のキャパ制限がない時期が含まれているのに対し、未発表の大会はキャパ制限後のものになっているのであくまで上の仮定値は予想の上限という感じですかね(再開後だけのデータでやろうと思うと動員発表大会がかなり少ないので難しい)。
単純にキャパが半分なら予想動員も半分、としたものを下限とするなら、
DDTは1万9千人~2万6千人NOAHは2万1千人~3万1千人というのが予想動員範囲という感じでしょうか

これを踏まえるとおそらく両団体は全日本を上回るかどうかという動員だったのではないかと予想されます(ドラゲー以上というのは少し難しいのではないか)。
こうして出そろったものを見ると例年以上に新日本の割合が大きい、という感じがしますが観衆未発表になっている大会数が増え、業界全体の総動員が見かけ上減少した一方で、有観客興行は全て発表している(動員こそ減っていても)通常営業の新日本という状況があるために、見かけ上割合が増えているのではないか?という感じはしますね。
つまり見かけ上新日本の支配力が増した感がある一方で、実は例年と変わらないんでは?疑惑。

 

所感雑感

ということで何から何まで異例尽くしだった2020年の日本プロレス業界についてでした。
今回調べてみて一番の驚きはCybeFightだけでなくそれ以外にも(無観客興行以外にも)観衆未発表が多かった、と言うか増えていたことですかね、まさかここまで多いとは。
まぁ昔クッキークリッカーが流行った時に「人間は数字が増えるだけで嬉しい」という指摘をしている人を見かけましたが、逆に言えば減る数字を見るのは苦しいもので、
動員なんかまさにそんな数字なので「別に律義に乗せる必要なくね?」というのも道理なのだ。
新日本に関してはブシロードグループのスポーツ・ライブ部門の主力製品という立ち位置もあるのでこうした数値は逐次発表していかないといけないという事情もあるとは思いますが、集計する側としては嬉しい限りではあります。
似た話でいえばCyberFightもCyberAgentの一部なんだからその辺は逐次発表すべきなんでは?と思ったりしましたが、そもそもCyberAgentのグループではあるものの決算発表とかには全然登場しないので、ブシロにおける新日本とかとは立場が違うんだろうなぁとは思うとこですが。

まぁいずれにしても3割も不明、という状況が一過性のもので、キャパ制限がなくなれば通常通りになってくれることを祈るのみではあります。
数字を見るものに取って一番いやなことは「調べられない数字がある」ことなのでそこは何卒よろしくお願いします。

きょうはこれまで、それでは

*1:キャパシティの制限+コロナによって集客が大幅に減少したため、もしくは集計するにあたって半券を数えること自体へのリスク回避のため?

*2:そもそもCagematchに記載されている大会が全大会でないということも言えますが