2024年という年は日本のプロレス界においてどんな年だったのか?
正直言うと筆者としてはそれまで疑う余地のない”推し”であった新日本オカダ選手が主戦場を日本から移したことで一つの時代の終わりを体感したりしていたのですが、それ以外にも色々な変化、または事件が起きたのが2024年ではあります。
それを今年も数字で見ていきたいと思います、というか数字を見た時に「ちょっとエポックメイキングな年なのでは?」と思う節があったのでこんな書き出しなのですが、それはまた後程。
今年もプロレス統計ではファンメイドのプロレスデータベースCAGEMATCHに掲載された2024年に日本国内で開催されたプロレス興行のデータを集計し、その結果について報告します。
- 2018~2024年 動員/大会数推移
- 2018~2024年 平均・中央動員推移
- 2018~2024年 動員上位10団体
- 新日本プロレスの国内動員について
- スターダムとマリーゴールドの比較について
- まとめ
2018~2024年 動員/大会数推移
2018年から2024年にかけて、日本国内で開催されたプロレス興行の合計動員(青棒、左軸)と大会数(赤折れ線、右軸)を示したのが上のグラフになります。
2024年の大会数は2870大会で前年から100大会ほど増加、総動員は91万1202人で、前年から5千人弱、割合で言うと+0.5%の微増となりました。
2020年にコロナウイルスによる大会自体の制限やキャパシティの制限などによる動員の大幅減があった後は、徐々に動員が回復して言っている傾向はありますが、依然として2019年時点の水準にまでは戻っていません。
それに加え、コロナ以後でも続いていた増加傾向がかなり鈍化した感じもあり、コロナでの動員数の落ち込みが一時的なもの(時間がたてば元の水準に戻るもの)ではなく、今後継続していくものであるという感じがします。
そういった「コロナ前後でのプロレス界の変化」という意味で、以前から注目しているのは観客動員の公表割合(上図)です。
上図は各年の全体回数の内、動員発表があった大会(青色)となかった大会(灰色)の割合を示した棒グラフになります。
上図で分かるようにコロナ以前は80%程度の動員発表割合だったものがコロナ以降は60%程度で推移しており、つまりその分動員数(公表分)は減るのが道理というもの。
そういう意味ではコロナ前後でのプロレス界全体での動員比較はやあり難しいかもしれません。
2018~2024年 平均・中央動員推移
観衆発表の有無によるバラツキを無視しした指標として平均動員(上図緑折れ線)と動員の中央値(紫折れ線)を比較したのが上図。
2024年の平均動員は527.9人/大会、中央値は297人となりました。
平均値の面では2019年の水準には至っていませんが、中央値の水準では2018年を超える水準になってはいます。
そういう意味だと「全体の傾向としてはコロナ前と似たようなもの」「平均で劣るあたり大会場での動員が回復しきっていない」という傾向はあるかもしれません。
2018~2024年 動員上位10団体
2018~2024年の団体別の動員の上位10団体を示したのが上の表で、2024年に上位5団体になったところのみ色付けをしています。
1位は新日本プロレス(NJPW)で24万9502人(27%)、2位がドラゴンゲートで9万3589人(10%)、3位がスターダムで7万9505人(8%)、4位がプロレスリングノア(NOAH)で6万4312人(7%)、5位が全日本プロレス(AJPW)で6万3551人(6%)となっています。
順位的な変化で言えば前年4位だったドラゴンゲートが動員を着実に伸ばして2021年以来の2位に返り咲いたのと同時に、2022・2023年と2位をキープしたスターダムが動員を下げて3位陥落、昨年武藤選手の引退特需で大きく動員伸ばしていたノア大きく動員を下げて4位に戻ったという感じ。
スターダムに関しては後述もしますが、ランキングでも7位に食い込んでいるマリーゴールドの旗揚げも影響した感じがあります。
そしてそれらよりも個人的に注目したい点はほぼ不動の1位を集計以来貫いている新日本プロレスの動員数。
表を見てわかるようにコロナ禍が直撃した2020・2021年以来初めて動員が減少しています。
これについては集計した自分も「本当か?」と思った面もあるので以降で少し詳しく数字を見ていきます。
新日本プロレスの国内動員について
まず2018年以降の新日本プロレスの国内大会の数、動員についてまとめたのが上図になりますが、2024年の大会は140大会、動員は24万9502人となっており、
2023年の145大会、25万5900人からともに微減したという形になっています。
それを踏まえて平均動員を見てみると2024年は1794人/大会で2023年の1764人/大会をわずかに上回ってはいるので、結論としては「人大会当たりの動員は改善しつつ、大会数が減少したため総動員が減少した」という形にはなりそうです。
なお、今回集計に用いているのは日本国内の大会に限定していたので国外の大会は含まれていません。
国外の大会について集計に加えてみると2024年は2万9353人(AEWとの合同興行を除くと1万7906人)、2023年は1万2375人となるので合同興行を除けばほぼ同程度(2024年26万7408人、2023年26万8275人)、合同興行を含めば+1万人ぐらいになる計算です。
こういった結果を踏まえると、2024年と言えば新社長体制になった年でもあるので新体制の下で「大会数削減の方針になった」「国外大会の重要性がさらに増した」という傾向はちょっとあるかもしれません。
スターダムとマリーゴールドの比較について
2024年に起きた大きな出来事の一つとして新たな女子プロレス団体マリーゴールドの設立は上げられるでしょう。
正直その内情はあまり詳しくはないのですが、スターダムと繋がりが深いスタッフ・選手が多く参加していたこともあってその影響は動員面でも表れていた様子。
上の表でも見せましたが、それまで右肩上がりに動員が増えていたスターダムは2020年以来初めての動員減、対してマリーゴールドは初年度から(しかも4月からの活動開始で)総動員7位に食い込む結果に。
そういった結果を見ると「既存のスターダムファンが分裂してマリーゴールドへ流れたのでは?」という発想にもなるので、上図のように積み上げ棒グラフの形で動員巣を比較。
結果から言えば、2024年のスターダムとマリーゴールドの総動員の和は2023年のスターダムの動員を超えてはいるので、単純にファン層が分割したという形ではないですね。
とはいえそのとらえ方も、「ある程度両方を見る層がでた」「昨年までと同程度スターダムを中心とした視聴者層が成長しつつ、それを二団体で折半する形になった」「団体の分裂・対立により視聴総数は増えた」とかいろんな見方はできますね。
勿論スターダム単体で言えば大きく減少したわけではありますが。
まとめ
- 国内動員の昨年からの伸びはわずかとなり、頭打ちであることが疑われる
- 業界トップの新日本の国内の動員が微減(コロナなどを除けば集計以来初)
- 新団体マリーゴールドが7位に躍進した反面、スターダムは2020年以来初めての動員減