プロレス統計

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コロナ以後の国内プロレス団体の動員回復率について

 先日、新日本プロレスのG1 CLIMAXが終了しました。試合についてはさておき少し目を引いたのは優勝者オカダ選手が試合後のコメントで大会の動員について言及したこと*1。以前から会場の入りに関しては目標を掲げることが多い選手でしたが、G1優勝の場でもそういうことを述べるほどの危機感を持っているという表明にも見えるわけです。

 

 さらに言うとその後出てきた新日本・大張社長のコメントでもシリーズ全体の動員についての目標設定について語るとともに、目標の一つとして「来場習慣を取り戻す」ことがあったと明かしています*2

 

 2020年のコロナ流行以降、国内のプロレス環境は自粛→無観客→キャパシティ制限の状況を経て、2022年ようやくフルキャパシティでの興行開催が可能になりました。しかしキャパシティの制限が解除されたからと言って観衆が元通りになっていないのが現状、ということが冒頭の二人のコメントから読み取れるわけですが、実は同じような状況が他のプロスポーツでも起きているようで、プロ野球では「コロナ前の4分の3の動員*3」、サッカーJ1・J2では「全カテゴリー平均で2019年比68%*4」という報告があります。

 

 というわけで今回は自前集計で日本プロレス界での同様の比較を行ってみようと思います。
※いつものごとく海外のプロレスデータベースサイトCagematchのイベント情報を集計して算出しているので、データに抜けなどあり正確性は保証しないので、あくまで参考にしてください。

 

月間総動員比較

 まず初めに日本で行われたプロレス興行の動員を2019年から2022年まで月ごとに集計したのが上のグラフになります。赤いラインは2022年の結果ですが8月18日までに掲載されていた結果について集計しているため、他の年と比較して多少低めに見積られている可能性はあります。

 2019年はコロナなどの影響がなかった年の例として挙げていますが、その後の2020年は2・3月からコロナの影響が出始め、6月ごろまでは興行自粛+無観客試合の式、7月以降はキャパシティ制限下の状況になっています。続く2021年は各月いずれも2020年の7月以降と変わらない動員が続き、それは2022年の2月まで続いています。

 対して、202年3月からは徐々に動員が増加しており、おそらくこのあたりの時期からプロレス界でもキャパシティ制限の撤廃が行われ始めた時期でしょう。そのため3月以降は2021年比でかなり動員が増えているものの、2019年にはまだまだ及んでいないことが分かります。

2019年比各月動員

 先ほどのグラフは縦軸が動員数でしたが、今度は「2019年比での動員割合」に直してみたものになります。2022年に注目すると、2月までは50%未満を推移していましたが3月以降割合は増加していき、現状だと4・5・7月で2019年比80%弱まで動員が回復しているのが見て取れます。

8月までの動員・前年比・2019年比まとめ

 続いて2019年から2022年の1~8月の間の合計動員と前年比、2019年比をまとめてみたのが上表。2022年はまだ8月最終週の動員が加わると思いますが、現状値としては44万7691人が総動員となっており、前年比140%2019年比では56%という数値になっています。冒頭で紹介した記事で言うと野球では動員率という数値を使っていますがセ・リーグで76.8%、パ・リーグで69.86%、全体で73.85%となっており、サッカーではJ1・J2では62%と紹介されていました。

 

 こうした数値で比較してみると野球・サッカーと比べても厳しい状況にあるというのが見て取れます。ちなみに各球団のデータが公開されていた野球の中で言うとプロレス界の割合に近い数値を出しているのはヤクルトの56.3%と入場制限を行っている日本ハムの49.73%ぐらいでした。

団体別動員、2019年比

 最後に2022年の現状での総動員トップ6団体と参考として東京女子プロレスについて、2019年・2022年の動員と、2022年動員の2019年比をまとめてみたのが上の表。目を引くのは、前述したように業界全体としては2019年比50数%と減少しているのに対して、逆に成長を見せているスターダムと東京女子の女子プロレス2団体。特にスターダムは019年比207%の高成長で現状業界単独2位に浮上した形でもあります(スターダムは2020年に4位→2021年に3位と着実に業界内の順位を上げている*5 )。道理でどこぞのオーナーも鼻息を荒げているわけだ・・・

 また、男子団体の中で言うとNOAHは2019年比80%と男子団体の中では比較的健闘していると言えるでしょう。

 

所感雑感

 ということで2019年比の結果についてまとめでした。どのスポーツでも同じような苦しみはあるんだろうなァと思ってはいたんですが、比較してもプロレス業界は結構厳しい状況にあるのは確かそうという感じはしますね。これを踏まえると冒頭で紹介した新日本での発言なんかも、彼らがかなり危惧していることを示してるよなと思ったりします。