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中邑真輔/KENTA/KUSHIDAで見る日本とWWEの違い

最近は諸事情あって過去の映像を振り返る機会というのが多いんですが、そうすると当時と現在でえらく印象が違う選手がいたりして、興味深かったりします。
そういった変化は選手の成長にも依りますが、環境の変化も大きな影響があるんじゃないかな、と思ったりすることも。
現在では昔ほどの違いはないとは言われますが、団体、もっと言えば国が異なれば行われる試合スタイルも異なる傾向は今なお健在という印象はあります。

勿論団体が異なれば選手も異なるのが常なので、単純な「環境」のみの比較なんかは通常は難しいんですが、昨今は日米を股にかけて活躍する日本人選手も増えてきたわけで、
彼らの試合データを日米で比較することで日米(特にWWE)の環境の違いが見えたりするんではなかろうか?と考えることはできます。

ということで今回は日本からアメリカ、アメリカから日本へと舞台を移した三選手について各種試合数値を調べて、その変化を調べてみました。
まぁ結果としては日米での如実な差異なんかはそこまで見られなかったわけですが、日本からWWEへ渡った際の役割の変化なんかが見える結果だったのでご報告です。

 

取り上げた選手

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日本からWWEへ活動の舞台を移した3選手

(WWE.comより引用)

日本からWWEに移籍した選手は結構増えてきているとは思いますが、今回はタイトルでも述べたようにKENTA(ヒデオ・イタミ)、中邑真輔、KUSHIDAの3名について集計してみました。
まず初めにこの3名の略歴について説明すると

KENTAは1999年に全日本デビューしその後プロレスリング・ノアの旗揚げに参加し、2014年までジュニアヘビー、ヘビー級と階級を股にかけて活躍。
2014年9月からはWWE/NXTに活躍の場を移し、205Live(クルーザー級)で活動するも2019年1月にリリース。
同ねん6月に新日本プロレスのリングに登場し、以降(色々あって)BULLET CLUBの一員として活動をしています。
今回取り上げた3人の中でもWWE行きが最も早く、なおかつその後日本への帰還を果たしている唯一の選手でもあります。

中邑真輔は2002年に新日本でデビューし、IWGPヘビー級最年少戴冠記録などを打ち立てて活躍。
2016年は初めに新日本との契約満了をもって惜しまれつつ退団し、同年4月にWWE NXTでデビュー。
2017年4月以降、所謂”WWEの本戦”であるSmackDownに昇格。
2018年にはロイヤルランブル優勝などの実績を上げる。
今回取り上げた3人の中では、現状唯一の本戦への昇格を果たした選手*1となっています。

KUSHIDAは2006年にハッスルでデビュー、ハッスル終了後も師事したTAJIRIの立ち上げた団体SMASHに所属。
2011年3月に新日本に移籍し、ジュニアタッグ及びジュニアシングルで活躍。
2019年1月に新日本との契約満了により退団し、中邑と同じくWWE NXTに移籍。
今回取り上げた3選手の中では、最もWWE歴の短い選手になりますね。

集計したデータ

今回は上記の3選手のかかわった試合についてCagematchから集計。
日本国内の試合は団体問わず日本で行われた全試合(比較のためWWEの日本興業は除く)を集計し、アメリカ・WWEでの試合はWWEの行った全興行を対象に集計しています。
こういった形式のため「アメリカ・WWE」のデータにはWWEの日本公演にデータが含まれている場合があります。
集計期間は2012年から2020年4月まで。

以下のデータでは左からKENTA/中邑/KUSHIDAのデータをそれぞれ示し、それぞれ日本国内でのデータは青、WWEでのデータはオレンジで示しています。

年間試合数

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KENTA/中邑/KUSHIDAの年間試合数

まず初めに3選手の試合数の推移についてまとめてみたものが上の3図。
試合数に関してはまさしく三者三様といった様相。
KENTAは負傷欠場などの期間もあったのでWWE移籍後の試合数がかなり少ないような印象があり、KUSHIDAに関しても日本と比較してWWEでの試合数はやはり抑え目。
この両者は出場の舞台がNXTが主ということもあってか出場回数自体が少ないのかもしれません。
対する中邑はWWE以降も新日本時に近い100試合前後の試合数を記録して、これは2017年と早い段階で本戦昇格をした影響でしょう。

これを見るにNXTや205LiveとRawやSmackDownでは試合機会そのものの全体数が異なるという部分はありそうです(本戦の場合はハウスショーなんかもありますし)。
2019年からはNXTもテレビ放送が始まったんですがそれで試合数自体は変わったのかは気になるところです。

平均試合時間

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KENTA/中邑/KUSHIDAの平均試合時間

平均試合時間は試合数以上に三者三様といった様子。
KENTAは2014年までは平均1000秒弱とかなり平均試合時間が長かったのがWWE以降は500秒弱へと大幅に減。
その後WWEでの試合時間は増加傾向でしたが、新日本へ席を移した2019年も同程度の試合時間のよう(2020年は試合数も少ないので不当に長く見積もっていそう)。
対する中邑はWWE移籍後2018年までほとんど日本での平均試合時間と同等でしたが2019年から試合時間の減少傾向が強くなっており、WWE内での立ち位置の変化が表れているような感じはしますね。
KUSHIDAに関してはWWE以後のデータ不足の感はありますが2019年を見るとそれまでの新日本での数年間と比較して短時間になってはいました。

 

勝率

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KENTA/中邑/KUSHIDAの総合勝率

今回の集計で一番露骨な変化を、しかも共通点のある変化を示していたのが勝率。
御覧の通り三選手ともにWWEへの移籍後大きく勝率が上昇する傾向があります。
更にはその後は程度に差こそあれ勝率が減少していく傾向もあります。
KENTAは入団を前にハルク・ホーガン同席での入団契約、中邑も入団に当たってビンスやトリプルHとの会談などを行ったうえでの入団だったあたり鳴り物入りだったということもあって所謂「強キャラ」的登場を果たしたのかもしれません。
KUSHIDAに関しては該当する入団イベントはちょっと見当たらなかったんですがそれでも他二人と同程度の勝率を得ています(むしろ日本→WWEでの勝率の上がり幅でいうと圧倒的に高いとも)。

また別件としてKUSHIDAの日本での勝率が2015/2016年を境に20%近くステップ状に落ちているのが奇妙というか興味深いところだったりします。
2016年というとKUSHIDAのIWGPジュニア王者政権が本格スタートした年でもありますけど、何はともあれこの日以降勝利から縁遠い感じになってしまったようです。

 

所感雑感

というわけで日本とWWEを股に掛けた3選手の試合に関する変化についてでした。
試合数や試合時間はわかりやすい興行スタイルの違いなどもあってもっと如実に変化として現れるんではないかと思っていたんですけど思ったほどではなかったようです。
一方で勝率に関しては三選手ともに「あのジャパニーズ・レジェンドが!」という鳴り物入りだったのもあって、どの選手も大きく勝率を伸ばしているのが特徴的でしたね。
これがもし鳴り物入りでない、オーディションなど経由の選手だった場合どうなるのか、なんかも気になりますね。
まぁWWEとかだと新しく登場した選手は試合に勝って猛アピールをしている印象もあるので、こういう「新規参戦選手の勝率が高い」というのもWWEの特徴かもしれませんが。

いずれにしろ日本とアメリカ・WWEでの環境の違いは今回の数値からでは見つけられなかったので残念ではありますので次回何かしらのリベンジを狙いたいところです。

きょうはこれまで、それでは

*1:KENTAのいた205Liveも本戦と言えば本戦かもしれませんが