プロレス統計

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後楽園ホール興行で見るCOVID-19前後の日本プロレス界の変化

自粛から無観客、無観客から有観客へと徐々に”日常”に近づきつつある日本プロレス界。
とはいえつい最近も選手・スタッフの陽性発覚または疑いによって大会がキャンセルされる事例などもチラホラ見え、いまだに気を抜けない日々が続く予感がしている昨今です。
そういう意味では毎日中継などでプロレスを見れているということ自体がありがたいと感じるべきなのではとも思ったりします。

とはいえまだ大手を振って国内を移動することもままならない状況でもあるためか各団体の地方巡業、地方ビッグマッチというのも現状あまり行われていない様子(新日本全日本ノアのシングルリーグ戦が久々の全国巡業になるか?)
となると各団体は本拠地としている場所を中心に興行を行う、そして多くの団体が東京を拠点に活動している。
ということは後楽園ホールは現在、以前にもまして重要性が増しているんでは?ということを思いついたので、それを検証するべく各種数値を調べてみました*1

 

国内・後楽園ホール興行数比較

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まず初めに開催されたプロレス興行に関する解析から。
上図は2種類のグラフ(棒グラフと折れ線グラフ)が合わさった複合グラフですが、
棒グラフは各月の全国のプロレス興行数(薄色)及び後楽園ホール大会数(濃い色)を示したもので、青色が2019年・赤色が2020年のデータを示しています。
(スケールは左側を参照)

上図の青薄色の棒グラフを見てわかるようにイベント数はゴールデンウィークがある5・6月をピークにするような増減を例年示していたようですが、
2020年(薄赤色)は真逆に4月を底にするようなV字の増減を示しています。
有観客興行が再開されたのは6月後半からですが、国内イベント数としては前年の7~8割程度まで回復しており、感染症対策や会場の制限などもあってか例年通りにまでは回復していないようです。

一方で各色の濃い色で示したのは後楽園ホール大会の開催数ですが、7月及び8月の現時点(27日)で前年を上回る大会数が開催されています。
国内興行全体に対する後楽園ホール大会の割合を示したのが折れ線グラフ(スケールは右側)になっており、
前年は(1月を除けば)6~10%程度を占めていたようですが、2020年の7・8月はそれを大きく上回る約16%を占めています。

上述のように通常通りにプロレスの大会を開催するハードルが高くなっている一方で、実数でも割合でも例年以上に後楽園ホールが利用されているというわけですが、
これに関しては、比較的早い段階から後楽園ホールでは感染症対策が確立されたことや、そもそも首都圏を拠点としている団体が多いことなども考えられますが、
キャパシティの制限によって一大会当たりの利益も制限されるために薄利多売になり、多数の後楽園ホール大会を開催しなければならない事情もあるかと思われます。
いずれにしろ例年以上に後楽園ホールが稼働している状態にあるというのは事実のようです。

キャパシティ充填率比較

上述のように6月の有観客興行の再開以降、すべての観客を動員するタイプのイベントでキャパシティの制限が設けられており、後楽園ホールもその例に漏れません。
ただしその制限自体は8月頭に緩和されており、7月末までが500人程度、8月からは700人程度になっているようです。
そのため単純な動員としては例年の1/3~1/2になっていますが、今回はその混み具合を比較するためにキャパシティに対する動員の割合をキャパシティ充填率とし、以下で比較したいと思います。
個々では通常時のキャパシティを1750人とし、2020年7月は500人、8月は700人として充填率を計算しています。

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上図で示しているのは箱ひげ図*2と呼ばれるグラフで、中心の箱の範囲が上位1/4~下位1/4までの範囲、箱内部の線が中央値、箱から生えるひげの範囲が最大値・最小値の範囲を表すグラフです。
これを用いることで大まかなデータの分布を示すことができる優れものです。

上図の左が2019年のものですが、中央値こそ50~80%程度までバラツキがあるのに対して、箱の範囲自体はあまり変化がないのが分かると思います。
一方で右の2020年の充填率を見てみると1,2月は通常通りだったものが3月に大きく全体の分布が落ち込んでいるのが分かります。
当時はコロナの拡大真っただ中だったというのもあり、キャパシティ制限こそありませんでしたがかなり客足は鈍くなったと見えます。
その後興行再開した7・8月になると通常よりも箱の位置が高く偏っていることが分かると思います。
これはすなわちキャパシティ制限下では、元々のファン人口に対してキャパが小さくなったことで充填率が相対的に上がったと言えるでしょう。
また7・8月でキャパシティ制限の緩和がありましたが箱の分布には変化はあまり見られなかったところから、依然として需要過多の状態が続いていると言えるでしょう。

まとめ

  • イベント数自体は例年の7,8割だが後楽園ホール大会数は例年以上
  • 会場の充填率も例年よりも高め

 

所感雑感

というわけで後楽園ホールに関してまとめでした。
後楽園ホールはプロレスの聖地と言われる会場ですが、有観客興行再開に当たっていろんな感染症対策をまず行ったり、開催回数が多いためにこうして世の変遷を見る指標にできたりもして、やはり重要な会場だなぁと思ったりしました。
というかまぁ調べてみるとやはりそもそも都内の興行が例年と比べてもかなり多くなっている傾向はあるようなのでやはり現状は地方巡業シリーズは組みにくいということなのかもしれません。
とはいえ地方巡業を一切やめたWWEがこの10年で最高益を出したなんて話もありますし*3、地方巡業を再開することが各団体にとって良いことかどうかはまた別問題という気はしますが。

会場に関する解析は以下の記事もご参考に
国内全興行でみる日本のプロレス会場 - プロレス統計

また2019・2020年の国内大会数と後楽園ホール大会数の実数の表も参考にどうぞ

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きょうはこれまで、それでは

*1:今回もデータはCagematchから集計し、解析しています。

*2:箱ひげ図 - Wikipedia

*3:WWE Slated to Make Biggest Profit in Decades, Regardless of Releases