COVID-19の到来は多くの場面でそれまでの形式を変え、あんまりうれしくない類の”新しい日常”を作ってしまった感があります。
それは興行としてのプロレスにおいても同様で、無観客試合が多数開催され、最近になって有観客試合も再開されたものの、そのキャパシティには依然制限が存在しています。
そんな”新しい日常”においてプロレス業界はどう変わりつつあるのか、を今回は興行的数値を見つつ考えたいと思います。
今回は2020年1月~7月にかけてのプロレス界の動向を見ていくので弊ブログで以前投稿した日本プロレス団体たちは如何にCOVID-19を乗り越えたのか?という話も参照しつつご覧ください。
集計したもの
用いたのはいつもお馴染みCagematchのデータベース。
ここから2020年に日本国内で開催された興行情報について集計し、その観客数が明記されているもの(有観客及び無観客)について以下では各種解析を行っていきます。
集計期間としては2020年1月1日~7月14日現在までのデータを用いています。
(本来なら6月末までのデータを使うか、7月末まで待ってから集計すべきな気もしましたが、7月についてはあくまで参考値ということで)
有観客・無観客大会数
上図では有観客大会(With) を青、無観客大会(No)をオレンジで示し、各月のそれぞれの大会数を積み上げプロットで示しています(下表は実数)。
有観客大会に関しては、1・2月と100数十件を超えていた件数が3月には約半減し、4月にはついに0件となっています。
3月中は2週間のイベントの自粛要請があったため半減に留まっていましたが、4月は月初めから緊急事態宣言が発令されたため全面的に有観客興行が不可能になったと言えるでしょう。
同期間には無観客大会も開催され始めていますがその件数は多いとは言えず、例年の1割程度となっています。
これに関してはこの時はまだ無観客大会を開催する上でのノウハウがなかったり、会場の確保ができていなかったのではないかと思います。
その為、諸般の準備ができたと思われる5・6月には無観客大会の数は倍増しており、実際に興行を行った団体も3月時には6団体だったのが5月には倍の11団体にまで増えており、開催に当たってのノウハウ等がある程度共有されたのではないでしょうか。
緊急事態宣言自体は5月末に解除されていましたが、まだ様々な制限(人数や移動)があったためか開催されたのはわずか4件に限られていました。
その後、6月にはベントに関する規制も緩和されたことで一気に有観客興行数が増え、3月と同程度の総大会数となっています。
7月についてはまだ途中経過になりますが、いくつかの無観客大会もあれど8割が有観客大会になっており、6・7月で無観客主体から有観客主体への遷移が起きていると見えます。
大会の平均動員
今度はその大会の内実を見るべく各月の平均動員数を調べてみたのが上図。
こちらでは有観客大会のみを抽出して平均値を計算しています。
これに関してはビッグマッチの有無も関係するとは思いますが、有観客興行が始まった5・6月に関しては1~3月の値とは桁が一つ異なる値が算出されています。
これは有観客興行が小規模会場(都内でいえば新木場1stRingなど)で開始されたことに加え、そこにさらにキャパシティの制限があったのも関係があるでしょう。
その後7月にはキャパシティの制限がある程度解除され、数千人規模のイベントの開催も可能に。
プロレス界では新日本の大阪城ホール大会がその例に当たりますが、それもあって平均動員数は3月と同程度にまで増えています。
これに関しては今後引き下がるのではと思いますが、今後増えるであろう後楽園大会も限界が400人前後なので平均値として3~400人になりそうな気はします。
動員分布比較(1月/7月)
平均値では実際を見失いがちなので、今年1月と7月の観客動員の分布ヒストグラムをとったものが上図(1月が青、7月がオレンジ)。
純粋な分布を比較するため正規化(全棒グラフの値を合計すると1になるようにすること)をしてあります。
2000人以下に限定していますが2000人以上の興行は数件しか存在しておらず、今回は無視しています。
上図を見てわかるようにCOVID-19の影響がほぼなかったと言える1月の時点では100人を最も大きなピークとし、より動員が多い方へダラっと伸びた分布をしていましたが、
2019年7月は100人以下に大きく偏った分布となっており、500人以上の大会がまず開かれていないことが分かります。
これはすなわち「会場の本来のキャパシティの1/3~1/2」という感染症対策としてのキャパシティの制限が強く表れたものと見えます。
例えば7月に現状最も多く大会が開催されている新木場1stRING(弊ブログ調べでは2018年に最も大会が開催された会場でもある)は最大450人近く収容できる会場ですが、7月中は最大でも150人の動員しかなく、およそキャパは1/3程度になっていると見て良いでしょう(その大会が札止めだったのかはわかりませんが)。
また平均で見ると1月は214人/大会だったのが7月は120人/大会と約半減しています。
そういう意味では「行きたいけど自衛のために行かない」といった層の影響もある気はします*1が、
キャパシティと平均値から平均の満員率(平均動員/予想キャパ)を計算すると1月が約48%に対し、7月は80%となっており、満員率としては向上していたりもします。
まとめ
- 6,7月に入って有観客興行が多数を占めるようになっている
- 依然として各大会での動員数は少ない
- 上記はキャパシティの制限及び自衛意識のためと思われる
所感雑感
以上2020年1~7月途中までの国内動向についてでした。
本来は「COVID-19前後の」というタイトルにする予定だったんですが今まさに第2波来てるのに終わったことにしてはなぁ…と思ったので「第一波前後」としています。
そういう意味でいうと第二波以降はどうなるのかは気になったりもしますが、第二波も三波も別に来なくていいから…と思う日々です。
まぁいずれにしてもキャパシティ制限は続きそうですし、この中で有観客興行を行いなおかつ収益を上げるには如何に満員率を上げるか?が重要かなぁとも思ったりします。
それはすなわち上述したような「自衛意識に依る参戦回避」を如何に減らすのかということですが、これに関しては積極的対策とその情報公開と「クラスターが発生していない」という実績を作るしかないですからね。
その取り組みの効果が見られるのは今後1,2週間とは思いますが、はたして・・・
きょうはこれまで、それでは