プロレス統計

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日本プロレス団体たちは如何にCOVID-19を乗り越えたのか?という話

その形態は明らかに変わってはいるものの確実に「日常」は帰ってきつつあります。
世間一般でいえば先日からプロ野球も開幕し*1、野球ファンの元気な姿もネット上で見られるようになった感じもあります。
勿論それはプロレスも同様で、先日6月15日には新日本プロレスが110日ぶりに興行を(無観客で)再開しました*2が、それとほぼ時期を同じくして、DDTプロレスリングは同13日より有観客興行を再開しており*3、他の団体も競うように有観客興行再開の予定を発表しています。

こうしてプロレス界も新たな段階に至ったのを踏まえて、今回はCOVID-19の濃い影響下にあった2020年2月~6月+現状予定も出つつある7月までの国内プロレス団体の動向を振り返りたいと思います。

 

国内5団体動向まとめ

今回調べたのは新日本プロレス(NJPW)、全日本プロレス(AJPW)、プロレスリングノア(NOAH)、DDTプロレスリング(DDT)、ドラゴンゲート(DG)の国内5団体の今年2月~7月(予定)のイベントの開催状況。
イベント開催状況は通常の有観客を行っている状態(有観客)、興行を自粛し一切の興行を行っていない状態(休業)、無観客興行を行っている状態(無観客)の3つにわけています。

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まとめてみた結果が上の図。
こうしてみると5者5様という感じですが、各月ごとに5団体の動向を見ていきましょう。

2月:COVID-19拡散前夜

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2月中はまだ国内での感染者数も少なく各団体は通常の興行を維持している感じではありましたが、月末の29日から翌月15日までの間、政府からのイベント自粛要請があったため、各団体は3月前半のイベントをキャンセルしたため、2月終わりから休業期間がスタートしている団体が多いですね。
その中でいうと3月頭にビッグマッチが予定されていたドラゴンゲートは自粛要請中にイベントを行い、その後休業期間に入っています。
また、DDTは今回取り上げた5団体の中で最も早く無観客興行を開催しており(28日から)、そういう意味ではその後の国内プロレスのトレンドの先取りをしていたという感じもあります。

3月:イベント自粛要請下と”中緩み”

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3月前半は自粛要請のため有観客興行は(前述のドラゲーを除き)開催されませんでした。
そしてその自粛期間が明けた3月後半には全日本、ノア、DDTは有観客興行を再開。
当時の街角でも多くの人出があったとはいい、世間一般的にも「自粛が終わった」という認識が強かったのはあるでしょう。
とはいえ後の感染者の急増をみるに「まだ気を緩めるべきタイミングでなかった」という感じはしますし、同時期(22日)に興行を開催したK-1が物議を醸したのを見るに当時から世間一般の目はまだ否定的で厳しかったと言えるかもしれません。
そういうことを踏まえるに、休業を維持した新日本と、代わって無観客興行を開始したドラゲーはそういったリスクを回避したともいえるでしょう。

いずれにしてもこの時期に有観客興行を行った3団体も再びの休業期間、及び無観客興行機関への移行を見せています。

4月:緊急事態宣言下の日本プロレス

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4月はまさに急転直下の変化が起きた月であり、7日からは1都7県での緊急事態宣言の発令され*4、16日にはその範囲が全国に拡大されました*5
当然ながら各団体は有観客興行できる状況にはなくなったわけですが、ここで上記5団体は2分されることに。
6日より全日本が無観客興行を開始したことで、全日本・ノア・DDT・ドラゲーの4団体は緊急事態宣言下で無観客興行をすることを選び、たいして新日本はこれ以降も無観客興行を行わないことを選びました。

この2つの手法に関してはどちらが正しいのかどうかという判断はしませんがいずれにしてもこの5団体、というか新日本と他4団体ではこのCOVID-19下の状況で戦略が全く異なっていたことを占める好例でしょう。
奇しくもこの時期にドラゲーを除く4団体は馳浩衆議院議員に共同で要望書を提出*6し、その席で「プロレス協会の発足を」という機運が高まったりしていたんですが、
こうして各団体で取る戦略、というかとることのできる戦略が全然違って足並みがそろわなかったあたりやっぱりプロレス協会の発足って無理なんじゃないかなぁと思う次第です(少なくとも新日本と他4団体については)。

5月:”峠”を超えるも夜明けは遠く

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翌5月、割と諸国から「なんでこんなにも巧く行ってるんだ?」と今でも思われるほどの感染の抑制に成功し、25日には全国の緊急事態宣言が解除されることになりました*7
とはいえ3月の感染拡大などを踏まえてかイベント再開に関してはかなり慎重な判断が求められ、各都道府県でガイドラインが制定、各状況をステップに分けて徐々に日常生活に戻っていく方針がとられることに*8
その中でいうと大きな発声や県境をまたぐ移動(巡業)が避けられないプロレスはその他プロスポーツと同等ステップでの解禁となるため5月中は各団体のイベント状況に変化はなかった様子。

6月:帰ってくる”プロレス”

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そして6月は上述のステップ緩和のためプロ野球などのスポーツも無観客の形で再開されることに。
それを踏まえて15日より新日本は無観客興行を再開、一方でDDTは13日より”有”観客興行への切り替えを開始しました。
いずれにしろこの6月半ばがプロレス業界のステップ移行期とみえます。
その中でいうとDDTは、無観客興行の開始の時点からして、他団体よりも興行面で常に1ステップ先を進んでいるという感じはありますね。
それはやはりなんにしても先見性・話題性を武器にする団体だからこそという感じはします。
一方で新日本は2ステップ遅れての行動にも見えますが、DDTの先見性よりも確実性と信頼性に重きを置く方針とも言えるでしょうか。
かといって話題性に関しては「110日ぶりの再開」として溜めを効かせることで生んでいる辺り方法論が違うというか。

7月(予定):”新しい日常”がやってくる

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そして現時点で予定されている各団体の7月はこのようにタイミングのずれこそあれど、どの団体の有観客興行の再開を目指す方針のようです。
ドラゲーは4日KBSホールからの再開を予定し*9、新日本は11日大阪城ホールで*10、全日本は13日新木場*11、ノアは18日後楽園ホール*12
各団体が中小規模かつ活動拠点から近い会場からのスタートであるのに対し、新日本は大阪で3000人規模のイベントを予定しているのはここまでの動かざる戦略に対してかなり攻めているような感じはします(「コロナ以後初の有観客ビッグマッチの開催」を狙ってるのか?)

有観客/休業/無観客日数まとめ

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ここまで細かく動向を見てきましたが、最後に各団体の各期間日数をまとめたのがこちら、いずれも上述した2~7月の予定を含むデータから算出しています。
DDTは最も有観客期間が長く、同時に休業期間が短い団体という感じになりました。
興行ってそもそも会場の予約や色んな手配で時間がかかるもんだと思うんですが、その中で活動をしていない時間を極限まで切り詰め、なおかつ「有観客ができそうであればやってしまう」というフットワークの軽さが表れているかもしれません。

一方休業期間が最も長かったのは新日本、他の団体が長くても1か月弱だったのに対し丸々3か月の休業を行っています。
これは上述したように戦略が全く異なったということでもありますが、こういう戦略を取ることが可能だったということでもあります(ブシロードグループということ、新日本プロレスワールドの存在など)。
実際先日公開されたブシロードの第3四半期決算説明資料を見ると「興行とグッズ売り上げが大きく落ち込んだ一方でワールドのものとみられるコンテンツ売上は堅調」なんて書かれていたのでこういう収入源の存在は大きいんでしょう。

また無観客興行期間が最も長かったのはノアで、新日本の休業期間とほぼ同等の期間無観客興行を行っていることに。
思えば自粛期間の最初期に後楽園ホールでの無観客興行を中継したりと、無観客ながら色々話題を振りまいた期間だったように思います。
これに関しては最近になってCyberAgentグループ入りし、AbemaTVという中継手段を手に入れたことも大きいでしょう。
また一方でAbemaTVはこの自粛期間中に巣ごもり需要で大きく存在感を増したメディアでもあり*13、その中の一コンテンツとしてノアも有効だったんではないでしょうか。
実際先日の中継で23万6千視聴数という数字を記録していた*14のでAbemaTV内での需要を獲得しているということでもありますし*15

 

所感雑感

ということで2~7月にかけてのコロナ影響下での日本プロレス界についてでした。
まぁなんというか激動の半年だったな・・・というのが私感です、いやまだ完全な収束は見せてないし第2波がくるくると言われているところなんですけども。
この期間というのは個人的に私の生活スタイルも(コロナとか関係なく)様変わりしていた時期なのでとにかく慌ただしく、現実感が中々わかない日々だったんですが、こうして振り返ってみると本当にいろんなことがあったな…と思うばかりです。
勿論これが終わりではないのは確かですが、いずれこの日々が風化してしまうより前にまだ記憶が新しいうちにアーカイブ化しておくことはやはり重要なのです(と言って「逐次アップデートしていく」としていた中止興行一覧はすっかりやめてるけど)。

いずれにしてもこの6か月が歴史になって「そんなこともあったね」と振り返ることのできる”新しい日常”がやってくることを祈っております。

きょうはこれまで、それでは

*1:プロ野球、ついに開幕。「球音」だけが鳴り響くスタジアムに歓声が戻るのはいつの日か(阿佐智) - 個人 - Yahoo!ニュース

*2:各種数値で振り返る新日本プロレスの自粛期間 - プロレス統計

*3:【DDT】6.13(土)よりDDTグループが有観客興行を再開 | ガジェット通信 GetNews

*4:令和2年4月7日 新型コロナウイルス感染症に関する安倍内閣総理大臣記者会見 | 令和2年 | 総理の演説・記者会見など | ニュース | 首相官邸ホームページ

*5:令和2年4月16日 新型コロナウイルス感染症対策本部(第29回) | 令和2年 | 総理の一日 | ニュース | 首相官邸ホームページ

*6:新日本・全日本・DDTら7団体が自民党・馳浩衆議院議員に要望書を提出!「年間契約選手の休業補償を」

*7:令和2年5月25日 新型コロナウイルス感染症に関する安倍内閣総理大臣記者会見 | 令和2年 | 総理の演説・記者会見など | ニュース | 首相官邸ホームページ

*8:県をまたぐ観光振興は6月19日から「徐々に」。GoToキャンペーンのクーポンは7月下旬 - トラベル Watch

*9:【ドラゴンゲート】通常大会の再開となる7.4(土) & 7.5(日) 京都大会2連戦 対戦カード決定 | プロレスTODAY

*10:【お詫びとお知らせ】6月14日大阪城ホール大会を延期、7月北海道シリーズを開催中止とさせていただきます | 新日本プロレスリング

*11:全日本プロレス

*12:【FC予約は6/17より】プロレスリング・ノア 大会開催のお知らせ | プロレスリング・ノア公式サイト | PRO-WRESTLING NOAH OFFICIAL SITE

*13:ABEMA有料会員67.6万人に増加。巣ごもり需要でWAU30%増 - AV Watch

*14:ノア公式のツイート

*15:視聴数の定義についてはちょっと眉唾感あるのはさておき