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”日本プロレス協会”について所感と振り返り

先週、新型コロナウイルスによる長期の興行自粛の影響を受けて国内7団体による要望書が馳浩衆議院議員に提出された*1のは弊ブログでもお伝えした通り*2ですが、
それを踏まえてなんとなくの機運が高まっているのが日本プロレス業界をまとめるコミッション団体の設立という案。

特に東京スポーツでは要望書提出後のブシロード・木谷氏に対して「これを機につくった方がいいなと思いました。」という言質を取ったり*3
NOAHでの無観客試合後の武藤選手からも「コミッションはあった方がいいし、できる限り協力しますよ。」という言質を取ったり*4と積極的に機運づくりに奔走している感があります。

とはいえ武藤選手の記事にもあるように何度か機運が高まっては頓挫しているのが日本プロレスのコミッショナー機関。
ということで過去の取り組みを振り返ると同時に「そもそもコミッション団体って何をやるんじゃい」というところをちょっと考えたいと思います。

 

コミッショナーと業界団体

議論を始める前には言葉の定義を決めなければならないわけですが、そもそも「コミッショナーとは何ぞや」というのが問題なのです。
その語源から辿っても良いんですが、おそらくこの文脈で使われているのは日本プロ野球やプロボクシングで用いられているコミッショナーでしょう。
Wikipediaにおけるコミッショナーの定義は以下の通り

もっぱら野球やボクシング、バスケットボールなどのプロスポーツにおいて、選手権・リーグなどの最高運営責任者の意に用いられる
(コミッショナー - Wikipedia)

言ってみれば「各プロスポーツにおける最高責任者」という意味で使われているようです。
とはいえそういったプロスポーツはいくつかの団体の集合体であるのでまずその関係団体たちが加盟する業界団体(機構)があり、そこの長としてコミッショナーが存在する、という認識で良いでしょう。
つまり今回話が持ち上がっているのは日本プロレス業界で業界団体を立ち上げよう、という話ですね。
その業界団体の役割についてみてみると以下のようになってます。

業界団体が作られる主な目的は、業界として利害が共通する課題に対して、企業が共同して、個々の企業の名前を表に出さずに対応することにある。最も重要な活動は、国や州などの産業政策や税制改正に関しての情報収集や行政機関・政治家への意見表明である。
(業界団体 - Wikipedia)

今回の要望書の提出はまさに「政治家への意見表明」であり、業界団体の役割だったという感じですね。

過去のプロレスコミッション

とはいえ過去にこういったコミッション団体(業界団体)がなかったかと言えばそうではないようで。
かつて力道山が設立した日本プロレスは「ライセンス発行や選手権試合の管理、認定を行う日本プロレスコミッション」を含んでいた*5という話もあります。
とはいえ日本プロレスは当時の競合団体を淘汰し、一時的には日本唯一のプロレス団体になったりしていたので、所謂コミッション団体として機能していたのかは定かでなく、該当ページにもコミッションとしては形骸化していたという話が載っていたりもします。

sports.yahoo.co.jp

その次に古参のファンの脳裏に浮かぶのはグローバルレスリング連盟(GPWA)*6でしょう。
これは2006年9月12日にプロレスリング・ノア、プロレスリングZERO-1 MAXなど(当時でいうと)新規参入団体を中心にして結成された団体になっています。
その主な目的としては各団体の興行日程の調整が掲げられ、GPWA名義での合同興行なども行われていたようですが数回でその活動は休止しています。
活動休止についてはノアでは三沢社長の死、ZERO1の再建活動の多忙化などが理由として挙げられているようです。

ちなみにGPWAの実質的な活動休止後、三沢選手の死を契機として新日本全日本ノアの3団体で共通ライセンス構想などを話し合い、別の統一機構の設立の機運が高まったと言いますが、結局立ち消えになっているとか。

これら以外にも試みは何度か行われているんでしょうけどいずれも頓挫・立ち消えになっているというのが現状のようです。
だからこそ「今度こそ統一機構を!」という機運がまだくすぶっている感じもします。

統一機構は何を目指すべきか

そんなこんなで何度目かの日本プロレス統一機構の機運の到来が来ているわけですが、はたして今度こそ出来るのか?というのは当事者たちのやる気にかかっているとは思うのですが、それとは別に「統一機構は何を目的とするのか?」というのは重要だったりします。
例えばかつてプロレス団体も加盟していた日本プロスポーツ協会はゴルフ・サッカー・ボクシング・ボウリング・競馬…と様々なプロスポーツ協会が加入していましたがつい先日その中でも大手と言える日本野球機構と日本相撲協会が相次いで脱退しています。
その理由かどうかはさておきですが、同協会の主な活動は日本プロスポーツ大賞の制定とプロスポーツ年鑑の作製なんですが後者に関しては製作が4年近く滞り、その活動も全然なくいとか*7
ある意味「何のために入っているのかわからない」からこそ2団体の脱退が起きたと思われるわけです。
だからこそもし日本プロレス業界で機構・業界団体を作るのであれば「何をやるのか」は非常に重要と言えるでしょう。

上述したように業界団体の行動目的は「利害の共通する課題」の解決であるわけで、その「利害の共通する課題」とは?をまずは考えるべきでしょう。

まず今回のような「政府・政治家への陳情」はまさしくその目的に沿うものですけども、この数年を見ても同様な陳情を行ったケースは思い浮かばず、こういったことを目的に設立を考えると早いうちに形骸化しかねないかと思います。

かつてのGPWAでは上述した「興行スケジュールの調整」「プロレスラーライセンスの発行」及び「ルールの統一」などが持ち上がっていたようですけども、果たしてこれが利害が共通しているかどうかについては定かではない、というか頓挫している辺り利害関係があったんでしょう。
興行スケジュールに関しては興行に良いタイミング・場所というものが紛れもなく存在する(お盆の東京とか)以上そこを譲り合うことは一企業同士しかねる上に、その競争が業界全体に害をなすかと言われると微妙でもあるし。
またラインセンスに関しては、三沢選手の死後にも構想が持ち上がった辺り選手の質向上を目的としているんでしょうけど、ただでさえ若手不足の業界にさらに制限を賭けることは大手もですけど小さな団体ほど不利益を被るという感じが。
ルールの統一に関してもそれによる利益が果たしてどれほどあるのか?というのもありますし。

そういうことを考えてみると「共通する利害」として上がるのは選手のケガ防止に関してとかでしょうか。
2019年は通常のプロレスにおいて大きな事故などはなかったとは思いますが、何か大きな事故が起きるたびに「プロレスは危険だ」という風潮が出てたのは事実。
どこかの団体の特定選手のケガと言ってもひとくくりに「プロレスでの事故」と捉えられる当たり、この辺の再発防止を賛同する団体内で行っていくというのは重要ではなかろうかとも思いますし。
かつて、2017年に本間・柴田両選手が大けがを負った際には会社内で選手の健康管理をする「医事委員会」を組織している話*8がありましたけど、こういった枠組みを”日本プロレス協会”(仮)で広げていくのは「プロレス」そのもののイメージ維持も込みで利害が共通するとは思います。
2017年の時は定期的な健康診断と体調面を見ての試合スケジュール調整が挙げられましたけど、選手の受け身の技術向上や基礎体力に関して統一していくこともケガの抑止には役立つんでは、と思ったり。
あとは相撲協会でもネットリテラシーの講習なんかをやってるみたいなのでレスラーにもそういうことをやってみてはどうか。

 

所感雑感

というわけで所感でしたけど日本プロレスの統一機構についてでした。
まぁこれまでも機運があっては消えを繰り返してきた構想ですけど果たして今回はどうなるのか、という感じですね。
なんとなく東スポは「オールスター興行をする」ことを目的としている節もあるんですけど、「業界団体ってそういうことのために作るもんじゃ無くね?」という思いもありくどくど書いた次第です。
オールスター興行が果たして参加する全団体にとって利益になるのかと言われると首肯しかねる部分があるので、そこを目的にしてしまうと「数回開催して形骸化」というGPWAパターンになる気もするので(GPWAに関してはタイミングが悪かったという感じもしますが)。

冒頭に示した通り色んな関係者の言質が挙げられてはいるんですけど果たしてどこまでやる気があるのか、は依然疑わしいばかりですが、果たしてどういう結果になるのかは気にはなっている日々です。

きょうはこれまで、それでは