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日米プロレスファン評価の相対性について諸検証

インターネットの普及によって、少なくとも趣味の面において国境の存在感は薄くなってきた感もある昨今ですが、その趣味においても思わぬところで文化の違いを目の当たりにするものです。
ことの発端は昨日発表されたWrestling Observer Awards(以下WOA)という日本的に言えば「アメリカでのプロレス大賞」的もの。
こちらはWrestling Observerの読者・有料登録者による投票となっており、性質的には日本でいうブラック・アイ3さんが主宰するネットプロレス大賞に近いものになっています。
詳細については是非Wrestling Observerに登録して読んでほしいところ*1ですが、その結果についてブラック・アイ3が下記のようなツイート。

まぁこれに関しては日本人ファンが主体になったと思われるネットプロレス大賞とアメリカのファンが中心になったと思われるWOAの母集団の違いが表れたんじゃないか、と思うんですが。
とはいえ、こういう事象は「日米のプロレスファンの違い」が浮き出る事象でもあるので、今回はこの二つのファン投票型プロレス大賞ものの結果を比較することでその違いを見ていきたいと思います。

 

調べたもの

今回はネットプロレス大賞2019とWOA2019の所謂MVP部門、シングルレスラーへの評価についての比較をするわけですが、
ネットプロレス大賞の場合それに該当するのはMVP部門のみだと思うんですが、WOAには結構いろんな部門分けがあるんですよね。
WOAの歴代各部門1位のみをまとめたWikipediaページがある*2のでそちらを参照してほしいんですが、各国(北米、日本、メキシコ、ヨーロッパ)のMVPや非ヘビー級MVP、女性MVPに「最もチケットセールスに強い選手(Best Box Office Draw)」部門なんてのもあります。
で、それらの中でどれが所謂「MVP」に相当するのかを考えると2種類あるんです。
一つがLou Thesz/Ric Flair Awardとも名がつけられているWrestler of the Year部門
もう一つはMost Outstanding Wrestler部門という奴で、直訳すると「最も傑出したレスラー」って意味なんですけど、おそらくは「(プロレスの試合内容が)傑出した」っていう意味なんじゃないかと思われます(最優秀レスラー部門と訳すところもいますし)。

日本における大賞ものの選考においてよくある「試合内容」と「それ以外の活動」どちらを重視するのか?という問題がMVP部門ではよく発生するんですが、そこに悩まないで良いようにあらかじめ別部門に分けてやっているわけですね。
というわけで以下ではネットプロレス大賞MVP部門とWOAについてはRic Flair awardとOutstanding部門の両方と比較することにします。

集計結果

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簡単にまとめてみた結果がこちら。
順番はネットプロレス大賞の順位に順じて1~10位までをまず表記。
WOAについては各部門10位までのみ紹介されており、その中でネットプロレス大賞に11位以降の表記がある場合はそれも表記した形になっています。

ここで見てわかるようにネットプロレス大賞で1~4位になった選手はいずれもWOAのRicFlair・Outstanding両部門にランクインしていることが分かります。
そういう意味ではオスプレイ・宮原・オカダ・飯伏の4名の活躍は世界(と言っても日米間だけど)にとどろいているといっても過言ではないでしょう。

一方で5~10位の選手に目を移すと、9位の鷹木はOutstanding部門で4位と上位にランクインしているものの、ほとんどが両部門でランク圏外。
11位以下のデータが出ればまた別なんですけど、現状を見るとこのあたりの選手の評価は日米で異なっていると言えるでしょう。
また、逆にコーディやケニー、レイ・フェニックスといったAEWで活躍する選手たちやジョニー・ガルガノのようなNXTで活躍する選手についてはWOA両部門で健闘している一方でネットプロレス大賞ではランク圏外になっており、これもまた日米での評価の違いが表れているといえます。

まぁAEWはアメリカのテレビとFITE.TVでしか観戦できないですし、NXTもWWE Networkが必須なあたり日本からの視聴難易度が高めというのもあるので、逆に言うとそういう環境の中でネットプロレス大賞にもランクインしているアダム・コールが凄い、とも言えますが。
同様にイサミのBASARAや雪妃のアイスリボンなどは同様にアメリカからの視聴難易度が高い故・・・というのはありそうです。

順位差比較:MVPvsRic Flair award

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ここからはネットプロレス大賞とWOAの両方でランクインした選手の比較を行います。
ポイント数については母数から違うので簡易的に順位の実の比較をした結果が上のようになっていますが、
順位差は(ネットプロレス大賞での順位)-(WOAでの順位)をした数値です。
こうしてみるとオスプレイ・宮原・オカダ・飯伏・モクスリーの5名はおおよそ±5の範囲に収まっているので多少のずれこそあれ日米で評価の度合いに違いがなさそうです。

対してコール・棚橋・ジェリコの3名は大きく正の値となっており、すなわち「日本での評価」<<「アメリカでの評価」となっています。
特にジェリコについてはその順位差たるや89、ここがブラック・アイ3さんが言及したところですが、同じように棚橋選手の評価も日本よりもアメリカでのほうが順位がかなり高かったことが分かります。
この理由については要検証ではありますが、ベストバウト(Match of the Year)部門で2019.1.4の棚橋vsケニーが惜しくも2位(2156点、1位オスプレイvs鷹木は2549点)と健闘していた辺りあの一戦の評価のおかげなのかもしれません。

順位差比較:MVPvsOutstanding award

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 続いてMVP部門とOutstanding部門について。
先ほどは「クリス・ジェリコ選手の評価が日米でかなり違う」といったんですがそれ以上の差になっていたのはこの部門での石井選手でネットプロレス大賞ではMVP部門121位だったのふぁWOAのOutstanding部門では5位、その順位差実に116位!
順位差だけでなく点数についてはまさしく桁が違っているので、まさしく日米で評価が大きく違う選手と言っても良いでしょう。
とはいえネットプロレス大賞のMVP部門がWOAでいうRic Flair award+Outstanding部門に相当するにしても、合わせたことによってどうしても一方での評価が他方での評価に影響されるなんてこともあるでしょうし、やはり単純比較はできなさそうではあります。
またここでは逆に日本では評価が高くアメリカでは評価が低かった事例として宮原選手が該当していたりします(順位差-6)。

得点比率比較

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上述のように単純比較はできない、のでここではネットプロレス大賞のMVP部門とWOAのRicFlair部門とOutstanding部門の得点の合計を比較してみることに。
単純比較だとそもそもの得点母数の違いが出てしまうため、「最高得点を100とした%」を各選手ごとに出し、先ほどと同じようにその差をとってみたものがこちら。
2部門の合計ですとWOAでもオスプレイ選手がダントツの1位になるわけですが、点数的に見てみると黒文字で示した鷹木・モクスリー・コール・棚橋・石井選手は差異が10%程度には収まるので日米での差はあまり大きくないとも言えます。
一方で青く示した宮原・飯伏両選手は差がそれぞれ-43%に-11%と差が10%以上になっている辺り、如実に「日本での方がよく評価されている」と言えるかもしれません。
また逆にオカダ・ジェリコ両選手は差がそれぞれ+32%、+54%となっているあたり「アメリカでのほうがよりよく評価されている」ということが言えます。

 

所感雑感

というわけで簡単、というか雑にですが二つのファン投票の結果について比較でした。
欲を言えばWOAの方も全結果が欲しいところではあるんですけど、過去の結果についてもその類のデータは見当たらなかったのであきらめました、残念無念。
なんだかんだと言いつつ、日米のプロレスファンの間で共通する部分もありつつ、一方で大きく異なる部分もあったりするのは文化、といよりは周囲の環境に依るという感じがしてきますね。
環境が違えば価値観が違って、見ているものが同じでも見え方が違ってくる、なんていうのはよくあることなので。
こういう理由づけをするのはやはり楽しい、と思った今日この頃でした。

きょうはこれまで、それでは

*1:レスラー・オブ・ザ・イヤー(Ric Flair award)についてはここで見れます

*2:List_of_Wrestling_Observer_Newsletter_awards