東京オリンピックの開催によって俄かに景色が変わりそうな夏の新日本プロレス。
例年でいうと文句なしのドル箱シリーズであるG1 CLIMAXが開催されている時期ですが、都内の多くの会場が使えないことを鑑みてか、G1 CLIMAX事態を秋口にずらすことが先んじて東京ドームにおいて発表されていました。
そうなると気になってくるのは「その空いた夏には何を行うのか?」という話で、先日の札幌大会において久方ぶりの札幌巡業シリーズが開催されることも発表になりました。
そしてそれに重ね合わせる形で今回発表になったのが・・・
昨年4月に初上陸したマディソン・スクエア・ガーデン(以下MSG)への再上陸となる WRESTLE DYNASTY。
Dynastyとは「王朝」という意味で海外ファンからは「Wrestle Kingdom(王国)と対を成すようだ」と見られており、新日本プロレスも気合を入れて興行を行うんでは?と言われています。
概ね”良い”発表として受け入れられている感じはするんですが、一方である種の”不安”もまた鎌首をもたげてきます。
というわけでここ最近のアメリカでのビッグマッチと比較する形でその”期待”と”不安”について述べていきたいと思います。
対比するビッグマッチ
今回取り上げるのは先日発表になった8.22WRESTLE DYNASTYと、
昨年4月6日に同会場で開催されたG1 SUPERCARD*1、
そして同年7月6日に開催されたG1 CLIMAX29開幕戦のテキサス州ダラス大会*2の3つ。
ここで上げた2大会がどんな大会だったかというと、
G1 SUPERCARDはチケットが販売直後に完売になった文句なしの超満員札止め(観衆1万6534人)の大会ですが、
G1 CLIMAX29開幕戦のダラス大会は最大で2万人弱収容可能*3とされる大会場で集った観衆は4846人と興行的に成功とは言い難い成績を記録しています。
言ってみれば2019年の新日本のアメリカでの展開において成功と失敗、二つの象徴的興行と言えます。
逆に言えば前者の何が良かったのか、後者の何が良くなかったのか、という違いを比較することで今後の海外興行の方向性を探ることができる好例とも言えるのです。
というわけで以後ではG1 SUPERCARDとG1ダラス大会を比較しつつ、現状WRESTLE DYNASTYはどちらになりそうなのか?前者にするにはどうすべきなのかを素人目線で挙げて行こうかと。
以降に関しては「新日本はこうすべきだ!しなかったらおかしい!!」というものではなく、あくまで素人考えの予測憶測なのでその体で読み進めてください。
1.theELITEの存在の有無
よく言われるのは「MSGのチケット発売時にはケニー・オメガを筆頭にtheELITEの面々が所属しており、その参戦を目当てにチケットが購入された」というもの。
そういった集客力に関しては彼らが主体になったAEWのPPVやそれに先んじた独自イベントのALL INのチケットが30分で完売した件*4を考えるに確かに影響があると言えるでしょうし、確かにG1 SUPERCARDは彼らの在籍時に(発表は2018年7月13日、ケニーのIWGPヘビー戴冠直後*5 )、G1ダラス大会は彼らの移籍後に発売されています*6。
とはいえ、割と不思議に思うのは「じゃあなぜtheELITEが離脱した際にそのチケットが手放されなかったのか?」という疑問はあったり。
買ってしまった手前行かねば、となったのかそれとも買い手がつかないから行ったのか、そういう予想もできますが真実はわからないんですよね。
いずれにしろここから急転直下でAEWと提携の話がつかない限りこれに関しては今回当てにすることはできない要素と言えるでしょう。
2.WWEビッグマッチとの兼ね合い
アメリカではWWEがWrestlemaniaを開催する際に会場の近郊で多くのプロレスイベントが開催されることが恒例となっており、Wrestlemania Weekと呼ばれています。
これは、Wrestlemaniaを目当てに広大なアメリカ(または世界)中からやってくるプロレスファンをターゲットにすることで、Wrestlemaniaの恩恵に与るのが目的ということらしいです。
G1 SUPERCARDはWrestlemaniaの前日に開催され、しかも会場は車でわずか30分の距離だったのもあり、WWEと新日本&ROHをハシゴすることが容易な条件がそろっていた、と言えます。
一方のG1ダラス大会は直近にそういったWWEの大型PPVなどがなく、そういったハシゴによる恩恵に与れなかったといえます(むしろその少し後にSummerSlamやAEWのAll Outなどのビッグイベントがあった辺り見送る傾向が強かったかもしれない)。
それに対して今回のWRESTLE DYNASTYは翌日にWWEの四大PPVの一つされるSummerSlamが控えています。
その場所はマサチューセッツ州ボストンということで目と鼻の先というわけではありませんが車で3時間ほどの距離と「行けなくはない…かな?」という感じ。
そういう意味では、新日本としてもそれを狙ってこの日程にしたという部分もありそうではありますが、G1ダラス大会よりは恩恵があり、G1 SUPERCARDよりは恩恵が少ないといった状況と見られます。
3.都市そのものの違い
興行において重要なのはやはり人口の多い都市で開催することに尽きるとは思います。
MSGがあるニューヨーク市は全米一の人口(862万人)の大都市であり、一方でテキサス州・ダラスも全米9位の大都市、ではあるもののその人口は134万人となっています*7。
単純に人口が6~7倍違うとなると動員のしやすさはやはり違うのではないですかね(日本でいうと東京と新潟ぐらい違うし)。
4.カード発表のタイミング
これについてはG1 SUPERCARDとの比較として、というよりはG1ダラス大会時に見かけた不満としてになりますが、「カードの発表が遅い!」というのはよく見かけました。
良く考えずとも、アメリカ国内で言っても遠征をするとなれば移動費も宿泊費も馬鹿にならない額がかかる上に時間も膨大になりがち、であればこそ出来れば「間違いない試合が見られる」と確信してからでないと購入しがたいというのは人情でしょう。
G1 CLIMAXでは例年前シリーズであるKIZUNAロードでエントリー選手及び対戦カードが発表になるんですが、結果的に対戦カードが発表になったのは6月17日*8、ダラス大会まで1か月を切っていたわけです。
まぁ日本国内であればそれからでもなんとか・・・ってところなんでしょうけどそういう感覚がアメリカでは通用しないと思った方が良いようです。
と言いつつG1 SUPERCARDについてはメインのカードが決定したのはわずか1週間前の3月24日だし、そもそもそのはるか前にチケット売り切れてたし・・・となるんですけどね。
これに関してはやはりG1ダラス大会ではハシゴ観戦ができる他のイベントなどがなく、G1ダラス大会のみを目当てにせねばならなかった、だからこそ余計にカードが重要視されるという部分はあったかと思います。
そういう意味ではWRESTLE DYNASTYではWrestlemaniaとのハシゴ効果を考えるとそこまでナーバスにならなくても良いのかな、と思いますが
現状のスケジュールではその直前のシリーズが7/11~7/19の北海道巡業であり、その最終日に決定でも1か月の猶予があるし。
とはいえ、それこそWRESTLE KINGDOMでは10月時点でメインのカードが決定してそれ以降プロモーションを繰り返すことを考えれば、その前の大阪城(6/14開催)でメインのカードだけでも決定すれば丸2ヶ月を残してプロモーションできるし、良いと思うんですけどね。
所感雑感
というわけで、噂を見かけた時から色々思索していた内容をまとめたものでした。
実際できそうかどうか、というのはチケット発売後の動向を見ないと如何せんわからないんですがそれまでただ噂にハラハラしていたり無根拠な慢心するのも性に合わないので、良い材料と悪い材料をちょっとまとめておきたかったんですよね、無論これ以外にも色々懸念材料はあるんでしょうけど(それこそ先日のアメリカ巡業は動員は良くなかったし)。
まぁまとめてみた結果を鑑みるに、「G1ダラス大会は苦戦するべくして苦戦したな」という感じもしてきましたけど、逆に言えば「それと比べれば良い線行くんでは?」という期待が持ててくる気がしたり、「逆にこれでだめだったらすげぇ落ち込みそう(自分が)」という不安が募ったり。
何にしたって「満員の会場」は何にも勝る演出であり、何度見たっていいものだから8.22にもそれを見たいなぁと思う日々です。
きょうはこれまで、それでは
*1:G1 SUPERCARD – アメリカ・マディソン・スクエア・ガーデン 2019/04/06 | 新日本プロレスリング
*2:HEIWA Presents G1 CLIMAX 29 – アメリカ・アメリカン・エアラインズ・センター <開幕戦> 2019/7/6 | 新日本プロレスリング
*3:アメリカン・エアラインズ・センター - Wikipedia
*4:参考:ツイート解析で見る"ALL IN一万人興行、30分完売"の反響 - プロレス統計
*5:ROH/NJPW PRESENTS「G1 SUPER CARD」マディソン・スクエア・ガーデンで新日本プロレスとROHによる合同興行開催決定のお知らせ | 新日本プロレスリング
*6:発表自体が2019年1月4日:【衝撃!なんと2020年は1月4日(土)&1月5日(日)東京ドーム“2連戦”!】2019年上半期の“ビッグマッチ”スケジュールも決定!【WK13】 | 新日本プロレスリング