「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」というのは鴨長明の方丈記の書き出しですが、つまりは物事は常に変化し続けているということですね。
それに関してはプロレスも同様で、「日本プロレス界」をここでいう河に例えるのならそこを流れる水はリングに上がるレスラーたちでしょう。
毎年のように新人がデビューし、海外遠征に出たり、戦う場を変えたり、けがで欠場したり、そして引退していく選手もいるわけで、常に全く同じメンバーがリング上にいるわけでもないのです。
ということで今回は日本プロレス界全体と、いくつかの団体について選手の移り変わりを数字で見ていきたいと思います。
集計したもの
今回用いたのはCagematchから取得した2012年1月から2019年10月までに日本国内で行われた全試合のデータ。
こちらから各年に出場した選手を調べることができますが、各年において「前年も出場していた選手(Exist)」「その年から出場し始めた選手(New)」「翌年も出場する選手(Stay)」「翌年は出場しない選手(Left)」の4種類の選手数を計算しました。
ExistとNew、およびStayとLeftはちょうど補い合う関係になるのでこれらを足すとその年の出場選手数になります。
またその性質上ある年のStayと翌年のExistは同じ数値になっています、
ちなみにいずれの数値も前年と翌年とだけひかくをしているのでそれ以前、以降に出場しているかどうかの判別はできません(Newと言っても一昨年出ていて昨年出てなくて今年出場、という人も含まれるってことです)。
日本プロレス界全体
まず初めに日本プロレス界全体で見た試合があったレスラー数の推移はこちら、薄い水色で示しているのが各年の出場選手数です。
各棒グラフの上には実数を、濃い色棒グラフの内側には全体に対する各数値の割合%を示しています。
2012~2015年ごとは800人台だったのが2016年から増加し2017年以降は1000人以上の選手が試合を行っているようです。
(勿論小さな団体などはデータベースに無い可能性もあるので実際はもっと多いかもしれませんが)
翌年も試合を行った選手数Stayに関しては多少の上下こそあれ毎年80%程度の数値となっており、選手の内2割は翌年試合を行っていないようです、個人的には思った以上に多く感じます。
去った選手数Leftが最も多かったのは2017年の225人、全体に対する割合でいうと21%でした。
2017年は登場した選手数が最も多かった年でもありますが、その分翌年はリングを去る選手も多かったとも言えます。
反対に新たに参戦した選手数Newに目を移すと、Leftや総選手数と同じく2017年が最も多く、268人が参戦し、全体の25%が新規参戦選手だったようです。
いずれの数値を見ても各数値に変動こそあれ、8割程度の選手が残り、2割程度の選手が入れ替わる、というのが日本のプロレス界のようですね、アメリカとかだとまた違うんだろうか。
新日本プロレス
これ以降は各団体ごとに推移を見ていきます、最初は新日本プロレス。
参戦した選手数は約80~130人と大きく変動しているのが見て取れますが、継続参戦している選手数Stayを見てみるとパーセンテージはさておきStayの人数は60~80人と安定しているのが見て取れます。
このStayにどんな選手が含まれているのかはわかりませんが、所謂所属選手を中心とした定期参戦している選手の数は60人程度で固定化しているということかもしれません。
そういう意味でいうと入れ替わりが起きているのはゲスト参戦やスポット参戦の選手が中心か、とみてみると翌年に去った選手数Leftは2012年と2016年に50人以上記録していることが分かります。
また新規参戦選手Newを見ると2012年の数値は2011年のデータがないので不明ですが、2016年は48%と実に半分近くの選手が新規参戦選手で、同時に40%近くの選手が翌年は去っています。
2016年は2012年と並んで参戦選手が特に多かった年でもありますが、リング上の出来事でいうと中邑を筆頭に多くの主力選手が去った年でもあります。
そういう意味で大きく開いた選手層の穴を多くの新規選手で補填しようとしたとも考えられます、その結果去る選手+新規参戦の選手で選手数が増えたとか(おそらく2012年も同様の傾向が得られるんでは)。
全日本プロレス
続いては全日本プロレス。
参戦選手数を見てみると2012年から2015年にかけて選手数がどんどんと減少して言っているのが見えます。
この時期というと全日本は武藤体制から白石体制への移行があり(2013年)、そして秋山体制へと移行した時期、白石体制では団体の鎖国を方針に掲げていた(当時の白石氏のブログ)こともあってか、Leftの値も50%以上が続き、如実に選手数も減っていたんですかね。
その後もそもそも試合数が少なかったのもあってか2015年はわずか73人で試合を行っていましたが翌2016年、三冠ヘビー級でいうと宮原健斗政権の確立を期に他団体との積極的な外交が開始されたのもあってか一気に選手数が増加、Newを見ても過半数である67%、105人の新規参戦選手がいたことに。
2017年以降も新規参戦選手は60名以上を維持しており新鮮味があるリングを維持しているようですが、一方で言時選手数も70名以上、2015年の総選手数以上を維持しているのも興味深い、というか最低でもこれくらいは定期参戦選手がいないと難しいのかもしれません(新日本でも80人ぐらいだし)。
新日本との比較でいうと新日本がExist:New比が8:2ぐらいだったのが全日本では6:4、より新規選手が多いのが特徴ですね。
プロレスリングノア
続いてはノア。
先ほどの全日本が大きな変革期を超えた時だったのに対してノアは変革期の真っただ中という感じもあり、全日本の2015年までと同じように選手数が徐々に減っていっているのが見えますね。
鈴木軍が撤退したのが2017年の頭、という子世もあって2016年には60%近い選手がノアを去ることになり、翌2017年には全体の62%に当たる43人の新規選手が登場。
続く2018年も47%の選手が去り、新たに59%の新規参戦選手が登場と1年では新体制に移行できなかったというのが見えます。
そして大きな変化が見えているのが2019年、勿論まだ途中なので今後も変化がありそうですが、ここにきて再びの選手数減少、現状で60人と歴代最小規模。
その一方で昨年から継続した選手数は71%、新規参戦選手は28%となっており、現在の新日本の割合に近く、2018年にある種完成した選手層をコンパクトに翌年に持ち越したとも見えます。
ある種必要最小限の選手層に最適化したのが現在のノアとも言えますかね。
全日本が常に新規参戦選手を絶やさないことを戦略に選んだのに対して、ノアの場合は純血もしくは少数精鋭主義を選んだという感じ。
ドラゴンゲート
続いてはドラゴンゲート、ですがこちらは上述の3団体と比較すると(内部の体制の変化はあったそうですけど)あまりリング上での変化はなかったのかもしれないという感じもあります。
継続している選手数は40~50人程度で安定しており、そこにゲストや新規選手が加わっている感じかもしれません。
新規参戦選手でいうと2018.2019年はそれまでと比較すると結構多めで総選手数も増えているのは、やはり新体制への移行の影響なんですかね。
大日本プロレス
続いて大日本プロレス、2017,2018年と選手数が少ない年もありましたが他の年は約150人かそれ以上とかなり参戦選手数が多いというのがある種特徴ですかね。
そのなかで興味深いのは、他の団体は増減してるが増加しているかのどっちかだった継続選手数(ExistもStayも)が減少傾向にあるところ。
特に2019年の既存選手数Existは61人で全体のわずか37%になっています。
その分新規参戦選手は実に103人と大台の3桁越え、ある意味2016年の全日本と同じく大きく陣容が変わる年だったのかもしれません。
おまけ:各種割合まとめ
最後に各団体間の比較のために4種類の数値の最新データを票の形式で。
こちらは2018年の継続選手数割合Stay%と去った選手数割合Left%。
継続選手割合でいうと大日本とノアが50%弱と低く、全日DDTが60%半ば、新日本とドラゲーが70%と高めでした。
続いて2019年の現状での新規参戦選手割合New%と既存選手割合Exist%。
New%では大日本が62%と圧倒的に多く、次ぐのが大日本とドラゲーで40%程度、DDT、ノア新日本が20%台と少なめでしたね。
所感雑感
というわけで選手の入れ替わりを見てみるまとめでした、なんか不要な図もあった気がするけど気にしない。
こうしてみると経営側の体制が大きく変わったりすると選手の入れ替わりが大きくなる傾向があるみたいですね。
分かりやすく参戦選手が変わることで見る側も「おっなんか新しいな」という印象を受けるので団体のイメージチェンジにおいても結構手っ取り早いのかもしれない。
とはいえ選手の入れ替わりはどの団体であれ、というか日本全体で見ても存在するので、好きな選手が今身近にいる人は今のうちに悔いないように応援するのが吉、かもしれません。
きょうはこれまで、それでは