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過去対戦で振り返る内藤哲也対飯伏幸太

諸事情によってすでに四月馬鹿及び新年号の乱痴気騒ぎの余韻も冷めているころにこの記事は公開されているんですがある種異様な盛り上がりでしたね、アレ。
個人的にも何も新しい元号は字面がかなりカッコよくて慣れるのに時間がかかりそうです。 

それはさておき新日本MSG大会に向けたまとめも第3弾、今回はIWGPインターコンチネンタル王座をかけて戦う内藤哲也飯伏幸太についてです。

自分でもどっかでまとめてたでしょこの組み合わせ、と思っていたんですけど意外や意外今回が初まとめでした。
というのもこの両者、先日のNJCやG1の公式戦としての対戦しかしたことがなく、今回が非リーグ・トーナメントでの対戦であり初のタイトルマッチなんですよね。
それが海の向こうのMSGで・・・と思うとNYのファンがうらやましい気がしてきますが、それはわきに置いておいて内藤対飯伏の過去対戦について振り返りです。

 

2013.8.2 G1での初対戦

(新日本プロレス公式サイトより引用)

試合映像

内藤と飯伏、有名な話ではありますが共に昭和57年生まれの同級生であり、同じく昭和57年生まれのプロレスラーが多くいたこともあって”昭和57年会”なる集まりを催して食事をする仲だったとか。
とはいえリングに上がれば同世代のライバル同士、共に華やかなスタイルが売りの者同士だったというのもあって対決の機運があり、実現したのが2013年のこと。
その当時の飯伏はIWGPジュニア王者、DDT所属・ジュニアヘビー級のままG1に”飛び級”で殴り込みをかけた、まさに勢いが最高潮の時期(ちなみにこのG1でベストバウトを取った中邑との対戦がありました)、
で、対する内藤は2012年の膝の大けがによる長期欠場からの復帰明け、試合勘もなかなか戻らぬ状態での復帰でした。
ある意味で”待望”の初対決だったものの、もう少しタイミングが違えばあるいは・・・と思わざるを得ない勢いの差があったかなぁとも思ったり。
とはいえ会場となった後楽園は大盛り上がりの末飯伏が内藤に勝利、注目の”同期対決”は勢いに乗る飯伏に軍配。

2015.3.15 人でなしの覚醒

(新日本プロレス公式サイトより引用)

試合映像

2013年以後の二人はかなり対照的なキャリアを歩みます。
飯伏は上述の対戦後の10月に史上初となる新日本とDDTの二団体所属となり、翌年の新日本の旗揚げ記念日ではオカダとの2度目の対戦でメインを飾り、その後ヘビー級へ転向し翌々年の1.4では二度目となる中邑とベストバウト級の死闘を再びくりひろげ、まさに順風満帆のキャリアを歩んでいます。
対する内藤は2013年のG1優勝以後、会場でのブーイングが目につき始め、翌年1.4では当初メインの予定だったオカダとのIWGPヘビー級戦はセミに降格、当時持っていたNEVERも失い、タイトルにもなかなか絡めず支持率だけ下がる中で迎えた2015年でした。
トップだけを見つめて駆け上る飯伏に対して、どん底から抜け出す活路を探して這いずり回る内藤、これはあくまで自分の印象でしたけど、当時の印象はそんな感じだったと思います。
そんな暗中模索の中で内藤が見出したのが”えぐさ”という空き家だったように思います。
それは自分の繰り出す技、というのもありますがそれよりは相手の”えぐい”技を受けきるという方面での変化。
それは復帰から2年がたち身体能力も回復したことでできるようになった内藤の持ち味、それも”諸刃の剣”ともいえる持ち味でしたが、奇しくもこの試合で後に飯伏の奥の手として認知される”人でなしドライバー”ことマスキュラーボムを食らい切り、観客に「やべぇ!」と認識させたことでその持ち味に手ごたえを感じた部分はあったかもしれません。
とはいえこの段階では、内藤の復活にはまだ材料が足りない状況でした。
内藤は再び敗れ、飯伏は勝ち、その勢いのままAJスタイルズとのドリームマッチへ歩を進めました。

2015.8.5 制御不能の目覚め

(新日本プロレス公式サイトより引用)

試合映像

上述の対戦からわずか5か月後、内藤は大きな変化を遂げています。
NJC後に渡墨した内藤は、当時CMLLでムーブメントを起こしつつあったLOS INGOBERNABLESに加入し、それを直輸入する形で活動を開始。
スーツ姿でかなり時間を取ったゆっくりとした入場、試合に参加するんだかしないんだかののらくらした態度、濃くなった無精ひげ、収まる様子のないブーイングを逆に煽る不敵な表情、G1ではさらにこれまでのコスチュームにはなかった黒を基調としたものに新調してその変化をさらに強調。
正直言えば会場の反応としては「内藤は何をやっているんだ?」という感じだったと思いますが、ネットとかでは「内藤が何かを始めている」という注目を浴び始めていた時期だと思います。
言ってみれば、翌年にブレイクするLOS INGOBERNABLES de JAPONの”覚醒前夜”とも言える時期ですが、内藤哲也の”制御不能”はここで明らかに始まっていました。
観客も戸惑っていれば対戦相手も戸惑う、その時点で完全な内藤のペース、制御下になっているというわけですが、このころの内藤は本当に得体の知れない、というかまさしく”化けつつある”感じがして今見ても興味深い試合だったりします。

そんな変化途中の内藤との一戦だったにもかかわらず、この両者の対戦では初めて大会のメインイベントを飾っているんですよね。
まぁ会場が岩手だったり飯伏も両国のメインを飾った直後だったというのもあるんですけど、いずれにしてもこの両者の対戦としては一つの転機になった試合かもしれません。
この時点で内藤さんののらりくらりとしながら、反則も交えながら、相手の攻撃を受けまくりながら強烈な一発で返していくスタイルは出来上がっており、最後はこのG1で棚橋戦で初披露となったデスティーノで飯伏からの初勝利。
いやしかし今となっては中々面白い試合なので皆さんもぜひ。

2017.7.17 立場が逆転した両者

(新日本プロレス公式サイトより引用)

試合映像

その後の経緯はこれまた対照的なものとなり、それでいて両者の立場は見事に逆転しました。
2016年、中邑やAJスタイルズといったスターが抜けた新日本には多くの変化が訪れました。
その中で内藤はいの一番に不満を口にすることでファンの支持を得、加速度的に勢いを増して念願のIWGPヘビー級を獲得し、LIJのブームと共にその支持を確固たるものに固めました。
対する飯伏は中邑の退団に時期を同じくして新日本を離れ、フリーとして活動を開始するものの、WWEのクルーザー級トーナメントCWCに参戦するも継続参戦には至らず、その後タイガーマスクWと称して新日本にも登場し話題になるも参戦は限定的。
言ってみれば、窮地に陥った新日本に「残った」内藤と「去った」飯伏、どちらを取るのも間違いではない選択肢でしたが、その結果両者に対する印象は大きく異なるものになった感じがします。

そうした経緯を経て「帰ってきた」飯伏に対して、「残ってきた」内藤の取りうる術は飯伏のすべてを受け止めつつも負けないこと。
それは自分の取った道の正しさをリング上で証明する唯一の手法であり、相手の通ってきた道を否定する最善の手法なわけで。
そして同時にそれは新日本随一の「ファンの代弁者」となった内藤がとらざるを得ない道だったような気もします。
その結果これまで以上にエグイ、というかそれこそまさに”ヒトデナシ”技を食らうことになったものの、結果として内藤は飯伏に再び勝ち、そのままの確固たる地盤を踏みしめてG1を制することになります。

2018.8.4 神を超え、朋を手にした男

(新日本プロレス公式サイトより引用)

試合映像

同期だからこそ、ライバルだからこそ、両者の関係は天秤のように揺れ動くようで、2017年の一戦後また対照的なキャリアを歩む両者。
内藤はG1優勝後、支持率を維持どころか増す勢いで進んでいき翌年1.4では念願の東京ドームのメインイベントに立つ、ものの敗北。
それは内藤への支持率を下げるものではなく、むしろ熱狂的な支持者を増やしたような感じもありますが、リング上での勢いは減速し、よく言えば安定期に入る。
対する飯伏は2017年中は雌伏の期間だったのに対し2018年は年始から再始動。
これまで数年にわたってすれ違い続けていた相棒、ケニー・オメガとの再合体はDDT時代からのファンの支持を呼び起こさせる、ある意味で飯伏にとって会心の一手だったかもしれません。
ある意味で本来の自由さを取り戻した飯伏は、新たなフィニッシャーとなったカミゴェをもって3年ぶりに内藤から勝利。
その一撃は、活躍こそすれ結果がなかなか得られなかった“溜め”が爆発したようでもありました。

2019.3.10 今度は”残った”飯伏

(新日本プロレス公式サイトより引用 )

試合映像

その後は飯伏にとっては試練の時だったかもしれません。
ファンの支持を一身に受けてついに決勝まで勝ち上ったG1でしたが、その決勝では”新日本プロレス”を味方につけた棚橋に阻まれ準優勝。
その後パートナーのケニーは棚橋との抗争で調子を崩しつつ、翌年の1.4を最後に退団する結果に。
ようやく回り始めた飯伏のキャリアが、ケニーという大きな歯車を失ったのはあたかも2016年の再現のようでしたが、今回の飯伏はあの時とは逆に「残る」ことを決断。
そこに当時の自身と内藤の決断の違いとその後の差異への考えがあったかどうかはわかりませんが、その決断は当時の内藤と同じく新日本のファンの支持を得るのに十分なものではあったと思います。
その”残留”第1戦が内藤戦となったのはまさに宿命というほかないですが、NJC一回戦からの天王山の一戦は皆さんの記憶にも新しいんではないでしょうか。

ただ2016年の内藤と違ったのはその結果のみ、2回戦でザックに敗れた飯伏は一気に頂点へ駆けあがるチャンスを”今回は”逃しました。

 

所感雑感

というわけで内藤対飯伏の過去対戦は内藤の2勝、飯伏の4勝で飯伏が大きくリードしています。
冒頭で述べたようにこの両者としては初めてのタイトルマッチになりますが、もう一つの違いは内藤と同じく飯伏も新日本でのヘビー級タイトル(NEVER無差別級)を経た後の対戦ということもあります。
最初はヘビー対ジュニアとして、そして今は両者ともにヘビー級のタイトルコンテンダー同士の一戦になります。
そして内藤さんのインタビューで気づきましたけどMSGで唯一の日本人対決というのもあって、日本人のファンとしても現地のファンとしても注目の一戦なのは間違いないでしょうね。

きょうはこれまで、それでは。